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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

ーー春を願う。
雪解けを願う。新しい季節の訪れを願う。安寧を願う。拠り所を願う。
ーー箱の容量は、思っていたよりもずっと小さかった。潰して、押し込んで、一ミリも隙間がないくらいにぎゅうぎゅうに押し込めても、いつも不安定にカタカタと音を立てていた。蓋が外れそうになるたびに、また潰して、上から圧をかけた。
記憶を小さな箱に押し込めるたびに、酒や煙草に依存していく自分を止められなかった。頑なに、見ないふりをして奥へ奥へと押しやった。けれどまた繰り返し目の前に現れては、カタカタと鳴っていた。
開いた箱を呆然と眺めていた。
だが、箱に押し込められた不幸や災いは、自分自身が作り出したものだ。
ーー春を願う。
忘却を願う。解放を願う。過去の自分を捨てて、新しい自分になれたらと何度願ったか。
けれど、開いてしまった箱の前に立ち尽くしながら思う。ずっと押し込めて、奥に押しやって逃げていたら、永遠に春は来ない。
雪解けも、忘却も、解放も、安寧も、優しい日だまりも、ずっと訪れることはない。
春加は考えていた。
もし彼女が生きていたら、自分は彼女にどうしたいのか。
何を願うーー?

