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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

広すぎる庭を抜けると、想像の十倍以上はあるデカい屋敷が待っていた。ベージュの壁は赤く縁取られ、クラシックな雰囲気を醸し出していた。童話に出てくる塔のような屋根や、部屋らしき場所の窓は外開きで、日本でよく見る『家』ではなかった。洋館、という言葉がしっくりくるような気がした。
とにかく、規格外なデカさも屋敷自体の雰囲気も、家ではないのだ。まるで映画のセットみたいだ。
「金持ちすぎるだろ……」
「ふふ、なんでも廃洋館を安く購入し、数年かけて直したそうですよ。老後は奥様や子供達とこちらに越して、自然に囲まれて暮らしたいのだとか。素敵な方です」
運転手はわずかに口許を綻ばせる。心がほっこりするような、いかにも『イイ話』のようなニュアンスで語られ、雰囲気に流されそうになるも。
「……ええええ!?」
土方に対する重大な情報が今の話の中に含まれていることに数秒遅れて気付いた一同は、それこそ大地がひっくり返るような大声をあげていた。
「……妻子……いんの?」
呆然としたまま宵が言う。
「あれ、言ってなかったっけ? いるよ。中学生の女の子と小学生の男の子がいて、東京のタワマンに住んでるよ」
「聞いてねーって」

