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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

付き合ってることは隠せという春加の言いつけを思い出したのか、名前の部分を恋人に置き換えて言い直す。
ローズのスタッフ達からは、おお……、というため息をにも似た喚声と共に拍手が起こる。
運転手以外、宵と晃が付き合っていることは周知されている気がするので、公開告白を受けているようなものだ。宵は居たたまれず、反応に困ってしまう。
「……おまえ、よくここでそういうことを堂々と」
「え、さっきのフリじゃないの? チラ見されたから、恋愛観を語れという意味かと……」
「違うって」
そんな、自作自演のようなことまでして公開告白を受けようなどとはつゆほども思っていない。
「……おい、もうくだらない茶番は終わりでいい?」
春加のしらけた声が入口の扉の前から響いてくる。
いつの間にか運転手は、屋敷の真ん前に横付けしていたバスを奥の駐車スペースまでしまいにいってしまっていた。
確かに、身も凍るような寒空の中、外で立ち話をしている場合ではない。東北の風は冷たく、関東よりもかなり冷え込んでいた。
まるで異国にそびえる城のような屋敷の、無駄に凝ったデザインの両開きの入り口が開く。
春加に引率されるまま、一同は屋敷の中へと入っていった。

