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フレックスタイム
第2章 秘書室へ
土曜日に新しいお手伝いさん、ケンにとってのナニーが来るという話は、
結論から言うと無しになった。
どういうわけか、来れなくなったらしいと社長が言った。

家事をしなさそうな社長と小さいケンを放り出す訳には行かず、
その日もそのまま、社長の家でケンと遊んだり、
ご飯やオヤツを作って食べたりしていた。

社長は書斎で仕事をしているようだった。


着替えを持って来ないと、
このまま明日まで着た切り雀になってしまうと思って、
ケンがお昼寝した時に、書斎をノックしてみた。

「社長、少し宜しいでしょうか?」

社長はゆっくり私の方に顔を向けると、
「良いよ?何?」と言う。

「そうだ。
コーヒー飲みたいな?
リビングに行こうか?
ずっと座りっ放しで、背中がガチガチになった」と、
肩を回しながら立ち上がった。

近くで見ると、
ハンサムで背が高いなと思って見上げると、
「何?惚れた?」と言うので、
「背が高いですね?
2メートルくらいに見えますよ」と言った。

社長は、
「そんなにデカくはないよ。
逆に佐藤さん、思ったより小さいね。
150くらい?」

「いえ、151センチです!」と言うと、
笑ってる。



コーヒーを淹れて出した。
私は、カフェオレにした。
猫舌で、すぐに飲めないから、
冷たい牛乳を入れた。


「あの…お手伝いさん、明日にはいらっしゃるんですか?
もしも今夜もケンと寝た方が良いなら、
着替えを持ってきたいです」と言った。

「明日も来ないみたいだよ。
うーん。困ったな」と言う社長は、
そんなに困った顔はしてなかった。

そして、思いがけないことを口にした。

「悪いんだけど、
業務として、うちの息子のナニーしながら、
俺のサポートして貰えないかな?
特別な業務だから、
仕事のランクと給料のランク、2ランク上げるという条件で」

「えっ?」

「住み込みしてくれるなら、
部屋も用意するよ?
今、ケンと佐藤さんが寝てる部屋、俺の寝室なんだよね。
流石にそこに、俺も寝る訳にはいかないからソファで寝てるんだよね。
なんか身体ガチガチ。
あ、勿論、襲ったりしないよ?
同意なく、そういうことは…」

「キス、したじゃないですか?」

「うーん。
ケンにもキスしてるから、
キスはOKにしてくれない?」

「ダメです。
だったら、この件は、引き受けられません」
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