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フレックスタイム
第4章 孤高の女
「離婚届を俺に渡して出て行く時、
ケンを連れて行くのかと思ったんだよね。
それなのに、
俺の金で買ったバッグや貴金属は根こそぎ持って行ったくせに、
大切な子供を置いて行ったんだ。
子供が居たら、生活を楽しめないって言ったよ。
それで、オトコの後を追ってアメリカに行くって。
俺は自分の耳を疑った。
子供を捨てて行くなんて、
信じられなかった」


私は、涙が止まらなかった。

「ケンは…
翔吾さんの子供ですよ?
ケンがそう思っている限り。
子供を捨てて行くような母親、
自覚もないままの父親は、他人と同じです。
翔吾さん、ケンのこと、愛してるでしょ?」


「うん。勿論だよ」


「あれ?
リリィ、泣いてるの?
お腹、痛いの?
僕がハグしてあげる」と言って、
ケンは背伸びしながら私を抱き締めてくれる。


「ケン、大好きよ」と言いながら、
ケンをギュッと抱き締めた。

そんな私達を、
社長がフワリと後ろから丸ごと抱き締めた。


大きくて温かい腕に包まれていると、
ゆったりと安心した気持ちになれた。


「翔吾さん…
もっとギュッとして?」


社長が強く抱き締めてくれると、
ケンも負けずにギュッとしてくれる。


「私…
とっても幸せな気持ちです」と言葉にすると、
ハラハラと涙が溢れてしまう。


ケンが頬にキスしてくれるので、
私もキスを返すと、
社長もケンと私の頬にキスをしてくれた。



ずっとこのままで居たいほど、
お互いを思い遣っている優しい気持ちに包まれた時間だった。
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