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Kiss Again and Again
第19章 恋愛事情

 マンションに帰ると オートロックの前に 長い足を抱えるようにして座り込んだ海がいた。 見ただけで 酔っているのがわかった。

 「どなた様でしょうか?」
 海の前にしゃがみこんで 訊ねてみた。

 「あゆ・・・ おかえり。 遅かったね。 ごめん・・・ またきちゃった」

 先ほどまでの喧騒とは打って変わり ここには静寂がある。

 「いつからここに座っていたのですか?」
 「わからない・・・ 気がついたら ここに来てた」
 「まだ 終電に間に合うから 駅まで一緒に行きましょうか」
 「部屋に 入れてくれないの?」

 そんな わたしからのジャッジを待つような目をしないで。
 頷く。
 「さあ 立って」
 腕を引いて 起き上がらせようとする。 中腰になったところで 首に抱きついてきた。 その勢いで わたしもシリモチをついた。

 「ペットでいいから あゆんちで 飼って」
 「ここは ペット禁止」
 「金魚なら いい? 金魚になるから」
 「この 酔っ払い」

 巻きついた腕をほどき 立たせた。 なんとなく海の後ろをはたこうとすると 上着の裾がシワだらけになっている。 どれだけ ここに座っていたの? 人だって通ったでしょうに。 みっともないと思わなかったの?

 わたしだって 中目黒の駅前で うづくまって 泣いた・・・ 人目もはばからず。 傷ついている自分しかなかったから 人からどう見えるかなんて 気にもしなかった。

 あなたも 傷ついているの? 

 駅までの道のりを 並んで歩いた。 時折 海はよろけてお互いの身体がぶつかった。 わざとではないらしい。 見た目より酔っているのかもしれない。 わたしも 嫌がって避けたりしなくなっている。
 結婚式場で再会した後に過ごした時間のせいで 親密さを取り戻しかけている。

 いけない・・・
 気をつけないと・・・

 この嘘つき男のペースに巻き込まれないよう しゃんとしよう。

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