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シャイニーストッキング
第18章 もつれるストッキング2      佐々木ゆかり
 70 敦子の想い(7)
 
 あの夜からほほぼ毎週末、渋谷の『クラブCANDY』に足繁く通い始めた。

 それはもちろん、クィーンであるゆかりお姫さまに会いたいが為であったのだ…
 そしてその切望通り、いや、危ういタイミングで助けられたという事もあってゆかりお姫さまのメガネに適ったのであろうか、なんと、わたしをお立ち台に引き上げてくれたのである。

 当時のお立ち台は色々なしがらみや、秩序、序列があり、そう簡単には上がれないという暗黙のルールがあったのだが…
 わたしの場合は女王様であるゆかりお姫さまの後ろ盾により上がらせて貰ったから誰にも文句は云われなかったのだった。

 だから一目置かれる存在になっていたのであるのだが…

 だからといってその後ゆかりお姫さまに構ってもらったり、特別に可愛がってもらっていた訳でもなく…
 むしろわたしの存在なんて、いや、あの男達から助けた事なんて、あのキスの事なんて時間の経過と共に忘れている様な様子であったのである。

 だけど、もう、あの当時のわたしは心からゆかりお姫さまに心酔し切っていたから…
 常に自ら、あの頃、ゆかりお姫さまに付き纏っていた男女問わない下僕の如くにわたし自ら、必死になって接近していたのだった。

 とにかく近くにいたかったから…

 一言でもいいから話したかったから…

 声を掛けて欲しかったから…

 匂いを感じていたかったから…

 同じ空気を吸っていたかったから…

 心から心酔していたのである。

 そして、常に、ゆかりお姫さまのキスを…

 あの唇の柔らかい感触を…

 一瞬感じた甘い香りを必死に思い浮かべながら…

 夜毎、一人慰めをしていたのだった。

 いや、しないではいられなかったのだ…
 
 だが、わたしはゆかりお姫さまの眼中にはほぼ入っては無く…

 いいや、また、それがわたしの自虐的でエム的な昂ぶりにも通じていたらしく…
 ゾクゾクと堪らない昂ぶりの疼きともなっていたのである。

 しかしそんなわたしの想いも僅かに約三ヶ月しか無くて…

 ううん違う…

 僅か三ヶ月後にゆかりお姫さまは…

 いつも傍らにいたツレであろう、素敵な大人の男性の通称『ロッキー』と共に、突然『クラブCANDY』から消えてしまったのだ。

 そしてそれから、わたしの迷走が始まったのであった…



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