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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第7章 第二話 【めざめ】 別離
通勤用に持つバッグを持ち、階段を十分注意しながらゆっくりと降り、広い構内を横切り道へ出る。構内を取り囲む樹々は緑が萌えて美しく、また桜のように満開に花開いているものもあり、優しく吹きすぎる春の風に、幸は顔がほころんでくる。既に腹の子は九ヶ月の終わりを迎えており、直に臨月であった。そのせいで、お腹は息苦しいほどに大きくなり、歩くのさえおぼつかない。浩三が一緒のときは、彼の方が気の毒だと思うくらい気を遣って転んだりしないように用心してくれる。