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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第8章 第三話【波の音】 予感
亮平は、かすかな吐息を洩らした。
「家のことを思い出しているのか」
幸はそれには応えなかったが、その表情から応えは一目瞭然に相違なかった。
それに、浩三も急に馬車ごと連れ去られた妻の行方を案じているだろう。今頃はその行方を探しているかもしれない。だが、幸は自分の過去について浩三にはすべてを話しているわけではない。かつて結婚していたこと、幸太郎がその男との間の子であることだけは打ち明けていたけれど、亮平の名もかつて暮らしていた家の所在地も明かしてはいない。
「家のことを思い出しているのか」
幸はそれには応えなかったが、その表情から応えは一目瞭然に相違なかった。
それに、浩三も急に馬車ごと連れ去られた妻の行方を案じているだろう。今頃はその行方を探しているかもしれない。だが、幸は自分の過去について浩三にはすべてを話しているわけではない。かつて結婚していたこと、幸太郎がその男との間の子であることだけは打ち明けていたけれど、亮平の名もかつて暮らしていた家の所在地も明かしてはいない。