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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦 
 幸は浩三の座っていた椅子にもう一度、その温もりを確かめるように触れた。その場にくずおれるように座り込むと、椅子に打ち伏した。ひくい嗚咽が放課後の教室の静寂の中に響く。
 大きなストーブの中では石炭が赤々と燃えていたが、北の海辺の春はまだ寒かった。戸外の寒さがこの部屋の中まで忍び込んでくるようだ。幸は両手でギュッと力を力を込めて我が身を抱きしめた。
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