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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦
思いがけない我が子との対面から一週間余りが過ぎたある日の午後、いつものように幸は小学校で子どもたちに教えていた。
夏の暑い盛りで、狭い教室は窓を全部開け放していても、じっと座っているだけで、じっとりと汗ばんでくる。
蝉の声が校庭の樹から降るように響く、うだるような夏の昼下がりであった。幸が一年生のトミの作文を見てやっているときのこと、教室の扉が開いて、用務員の老人が遠慮がちに顔を覗かせた。