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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第20章 番外編第三話【秘恋~背徳の恋~】 濁世の花
この男は恐らく最後の力を振り絞って、長い石段を昇ってきたに相違ない。この石段は健康な者でさえ、途中で休まねば息切れがするほど、きついのだ。寺にゆけば何とかなると一心に石段を昇った男の心根を思えば、無下に扱うことはできない。救いを求めてやって来た者を追い払うことはできないのだと、光円は笑顔で村人に言った。村人は光円にくれぐれも油断せず用心するようにと繰り返し念を押して帰っていった。