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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第22章 番外編第四話【轍~わだち~】
祖母が浩三の許を出奔した折、晶の母浩はまだ乳飲み子であり、その上の長男もわずかに四歳であったという。他人は皆口を揃えて、祖母を〝薄情で冷たい、鬼のような女、ふしだらな女〟と罵ったというけれど、もしそれが仮に真実であるとすれば、確かにそのとおりだろう。だが、当の祖母はむろん、母の浩にしろ祖父にしろ、家族は誰もそのことについて触れようとはせず、従って、晶もあくまでも通り一辺のことしか知り得ない。