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欲しいのは愛だけ
第8章 逆襲〜或いは隠れていた本音
「あのね、私がおっちょこちょいで転んだことにしない?
両親も、航平さんのご両親も、
本当のことを知ったら驚くし、哀しむわ?
良いでしょ?」

「でも、おっちょこちょいって…
メイが悪かったことになるよ」

「良いの。
航平さんだけが判ってくれてれば。
それと…優子先輩、酷い罪にならないようにしてあげて?
お子様が可哀想よ?」

「メイは…
お人好しで、どこまでも優しいんだな?」

「航平さんに深い愛情と後悔もあったのかもしれないし。
でも、二度と会いたくないわ。
航平さんも会わないでね?」と言って、キスをした。


そして一泊検査入院して翌日退院して実家に行った。

パンを頼んだ母は頼んだ自分を責めるので、
それはまた、慰めるのに大変だったけど、
なんとか上手く収まった。

傷だらけのバーキンを見て、
「まあ、このバッグもメイを守ってくれたようね?」と言って、
使い込んでいてもとても丁寧にお手入れをされていたクロコダイルのバーキンを持たされた。

「普段はそれでも良いけど、
ちゃんとした時にそれは持てないでしょ?
これ、パパから昔、貰ったものだけど、
私はまた、新しいのを買って貰うから」と、
父にウィンクをして笑った。

「それ、なんかおかしくないか?」と父が言うと、

「だってメイったら、ちっとも物欲なくて、
自分から何か買ってって言わないもの。
ね?航平さん、そうでしょう?」と母は航平さんに水を向けた。

「確かに…。
俺から適当にプレゼントするけど、
お強請りされたこと、一度もないです」

「モノより、一緒に過ごすことの方が大切だもの。
あ、美味しいモノ、一緒に食べるお強請りはしたいかも!
野田岩さんの鰻、食べに連れて行って欲しいな」

「あら!良いわね!
じゃあ、見送りがてらみんなで行きましょう?」と母は予約の電話をすると言って席を外した。


「本当にお転婆さんで、しかもうっかりで心配だから、気をつけるんだよ」と、
父が子供の頃のように頭を撫でてくれる。

「俺がもっと注意してれば…。
気をつけます」と航平さんが頭を下げると、

「いやいや、航平くんは本当にメイを可愛がってくれてますよ。
孫も抱けるなんて、本当に嬉しい。
ありがとう」と父も頭を下げる。


「さあさあ、出掛けましょう」と母が着替えまでして声を掛けてくれて、お辞儀合戦が終わった。
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