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重ねて高く積み上げて
第1章 プロローグ
12歳も年上の人だけど、ずっと一緒にいるからか、あまり年上って感じたことがない。

そりゃあ、思春期の時はそれなりに年の差を気にしたけれど、初めて出会った頃から成長しない笑顔で「ハナちゃん」って優しく呼んでくれるから、私も甘く苦い思いをしながら「ユウくん」って呼び続けることが出来た。

呼び方って本当に大切だと思う。

性別を意識する時期に、少しでもよそよそしく苗字で呼んだり、敬称を「さん」に変えていたら今の関係性は変わっていたはずだ。良い方向にも、悪い方向にも。

けれど、ユウくんは何も変わらなかった。

17歳、思春期真っ只中のユウくんの部屋へ突撃して、パッとしない友人達とゲームしてる中へと割り込んでも、パンイチで私服へと着替えようとしている姿を見ても、うっかり当時の彼女と致している場面に遭遇しても、少しも変わらなかった。

決まって「だめだよ、ハナちゃん。レディなんだからノックしよう?」とへらへらした笑顔で、優しく諭されるだけだった。

私は足繁く彼の家へ通っていたから、ユウくんの両親が帰ってくる時間、ユウくんの女性編歴、交友関係から下着事情まで、事細かに知っていた。

もちろん、あんなことやこんなことをするために通っていた。って言えたら良かったんだけど、彼が作るおやつをたかりに行っていたのだ。

ゲームをしている友人達が「ロリコン」って茶化しても、裸の彼女が怒っていても必ず部屋の扉を閉めて、私を優先してくれていた。

「今日は何にする?」って、5歳の私を見下ろしながら、ユウくんはへらへら笑う。そして、ホットケーキを何枚も焼いてくれた。

さすがに、パンイチでリビングをうろうろすることはなかったけれど、普段学校で過ごすユウくんが、そこでの友人や彼女の関係性を育むことより、私を優先することに、幼いながら強烈な優越感で満たされていたのを思い出す。
当時は優越感なんて言葉を知らなかったから、ホットケーキを何倍にも美味しく感じさせるスパイスと勘違いしていた気がする。

高く積み上げられたホットケーキを頬張る私を、対面に座って笑いながら見つめることがユウくんの常だった。大好きで、本当に好きで、あんまりにも見つめられるから、綺麗に食べられるように工夫したり、マナーを守ったり、とにかく粗相をしないようにすることで、自分を可愛く見せようと頑張っていた。

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