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ナカまで愛でてトロトロに溶かして
第7章 【譲れないもの】
「タカラアキ先生、今回の最終話………」
出来上がった作品をいち早く見たいと時間の合間をぬって家まで駆け付けてくれた。
「お直しがあれば何なりと、今は皆揃ってるのですぐ修正出来ますよ」
タブレットをガン見しながら何を言い出すかと思えば、まさかあの強面だった鍵山さんが肩を震わせ涙ぐむとは誰も想像出来なかった。
「はぁ………お前すげぇよ……やっぱり」
「え、え?ちょ、ティッシュ…」
思わず箱ごと渡しちゃったけど初めて見る涙に少なからず動揺してる。
アシスタント居てもお構いなしに号泣。
「やだぁ、もう〜どうしちゃったの?鍵山さーん!」
背中を擦り隣に座る。
ティッシュで拭いてあげるそばから溢れ出てきてるし。
「ねぇ、その涙は大賞獲ってからにしてよ、アハハ」
「バカ、大賞獲ったらこんなもんじゃ済まないぞ……うぅ…っ」
大きな身体の男が号泣とか、つられちゃうから。
気が付いたら私も大粒の涙が頬を伝って落ちていた。
大の大人が2人、笑いながら泣いてる。
「お前……苦労してきたのわかってるから余計に……あぁ、クソ、止まんねぇ」
目頭押さえて肩を震わせている。
「ケイコの集大成、必ず実を結びますよ、マンガ大賞間違いなしです」
2人の太鼓判も頂いた事だし、鍵山さんも泣かせた事だし、私も全部出し切ったからもう悔いはない。
コレで大賞を狙う。
「あぁ、それでだな、大賞の審査が決定したら例の宣伝もOK頂いたから」
そうか、全部決定してから発表なんだね。
出来レースとは思わせない為に審査員の発表を待ってからの発表にするそう。
「いや、見事なラストだった……ネームで知ってたけどこうしてちゃんと絵になって命吹き込まれると全然違った景色だよな……プロの中のテクニックを存分に叩きつけられた気がするよ、最高だ、ありがとう」
「私も……鍵山さんや、蓮くん、千景ちゃんが居なければコレは生まれなかったよ……私こそ、皆ありがとう」
きちんと頭を下げるとつられて2人も涙ぐむ。
皆が目も鼻も真っ赤にしてるからさすがに笑った。