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あなたが消えない
第11章 絶頂感にひれ伏す
私を優しく抱き締めて囁いた。

「だって、俺はおまえの下に住んでるんだよ?」

「…そうだよね。でも、恥ずかしい」

「恥ずかしくねぇよ。俺は素直に嬉しかった。どんな時でも、俺の事だけを考えていてくれているんだなって」

翔の事しか考えられないもん。

私の心も身体も、翔で支配されているんだもん。

「…当たり前だよ」

「妻に久しぶりに会って、俺は気付かされたんだ…俺の心は、おまえに有るんだって…部屋の中から、おまえが俺を呼んだ時に、俺は本気でおまえを愛してるんだって…気付いたんだ…」

「翔、聞いてもいい?」

「何だ?」

一番、聞きたかった事。

こんな非常識な言葉を、まさか自分が言う事になるだなんて。

そんな恋愛をする事になるだなんて。

「…奥さんよりも、私を愛してる?」

「あぁ、もちろんだ」

そして、翔はまた腰を動かしはじめた。

翔と同時に絶頂にひれ伏した後、玄関先の一畳くらいの狭い空間で、しばらく裸で二人で寝そべっていた。

今日のセックスは、以前よりも優しく感じた。

好きだ、愛してると言われたからだろうか。

「翼、明日アルバイトの面接なんだろ?」

あっ、覚えていてくれてたんだ。

「頑張れよ」

「翔こそ、奥さんもうすぐ戻ってくるから、よかったね」

「無理して言うな。翼、顔引きつってるの丸出し」

私の頬をイタズラに摘まむ。

「だって嫌だもん」

「実はその話、もう少しだけ延びたんだ」

「えっ、そうなの?」

「安心した?」

……。

「正直ね」

翔はニッコリ笑って、私の指先にキスをした。

「翼、面接が終わったら、夕方からお泊まりしない?」

「何それ」

「いや、マジに。旦那に嘘付いてさ」

「そうだなぁ、実家に戻るって事で嘘付いてみるか」
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