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近くて遠い
第11章 歪み
イライラする。



埋まらない心の穴。



そんな状況が、光瑠をちょっとずつ歪ませた。


自殺しようかと思ったこともあった。



だがそれでは父と変わらないではないか。


生きることも死ぬことも選べぬまま──




何でもいい…。

金だけはある。

この空虚を紛らしてくれれば…。




そんな思いから光瑠は吸い込まれるように夜の街へ通い始めた。


金を払って

酒を注がせ


気に入らなければ排除する。


深い情はいらない。


そんなものを持ってしまえば、また失ったときにつらいだけなのだから。


その点、金の繋がりは淡白で分かりやすかった。



心底つまらないが、家で一人孤独を感じて自分の弱さを痛感するよりよっぽど楽だったのである。



そんなある日のことだった───


「申し訳ありませんっ」


氷をぶちまかれてハッと目が覚めた感覚になった。



突然、桜子と名乗る女が光瑠の前に現れた。



そしてその容姿に、光瑠は息を飲んだ。





桜子は……悠月によく似ていた──…






それから、光瑠は桜子に会いに…いや、桜子を通して見える悠月に会いに、頻繁にradiceに行った。




やはり似ている…


胸が騒いで、懐かしい思い出が甦る。



だが、桜子は悠月のように笑顔を見せることはなかった。


どこか哀愁を帯びたその表情は、必死に生きる強い力を感じた。



傍に置きたい…


こいつを笑わせたい…



光瑠は今は亡き悠月への想いを桜子に投影した。



しかし、桜子と触れ合えば触れ合うほど、やはりそこにいるのは桜子で、悠月ではないことを痛感する。


イラつくのにやはり胸が騒ぐ。


どう接したらいいのか分からない



────お金があるかないかの違いですか……?




笑顔は見せず、唯一、自分に楯突く人物。



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