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第19章 運命

「要様、早く閉めてください！こちらで閉めますよ？」


「……斎藤、この車に傘積んでたよな。」


「えっ…？傘？傘なら、その辺に…」


要は暗闇の中、手をまさぐって傘を手にした。


「悪い。ちょっと待っててくれ。」



「えっ…はっ？！ちょっと…要様っ！？」



要は困惑する斎藤の声が耳に入らないほど、その少女に心を奪われた。


小さい身体を


雨にさらしながら、


懸命に生きようとする力に要はひどく惹かれた。



「何してるんだ？」


強引にその手首を引っ張って声をかけると、小さな身体がびくんと震えた。



そして、
すぐに、脇に寝転がる男が目に入った。



「酔っ払いか…」


「…………」


その問い掛けに、
少女は黙ったまま、微かに震えていた。


整った顔立ちからは
悲しみと迷いと…色んな感情が混ざって見える。


少しだけ謎めいた彼女の存在に、要はもっと知りたいと思った。


「君は一体いくつなんだ？ここで何をしている？」


グッと少女を引き寄せて要は彼女を傘の中に入れた。

近くて見ると、
まだどこかあどけなさがある。



「……わ、私……」


彼女は大きな瞳を揺らして要を見つめた。


ドキッ──と確かに要の心臓が鳴った。


目にみるみる貯まっていく涙が、心を大きく惑わす…


「泣くな…」


堪らなくなって、要は彼女を抱き寄せた。



すると、彼女は小さく声をたてながら涙を流した。