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近くて遠い
第3章 父の残したもの
奇跡だったのかも…



傘を眺めるといつでもカナメさんが浮かんだ。


────また君に会えるってことだろ…?



そう照れた顔で囁いた言葉頭から離れない。



「会いたい…」




たった一度会っただけなのにこんなにも身体がカナメさんのことで溢れてる。


こんな風に胸がときめいているのは初めてだった。



経験のない私には、この気持ちを何というのかがよくわからなかった。



次会うときは、お金を返すとき。


果たしてそんな余裕ができる日がくるのだろうか。


全く先の見えない生活に戸惑うばかりだけど、頑張って働けばカナメさんに会うことができる。




そう考えると、苦痛でしかなかった無限に広がる未来が、どこか輝いたもののように感じた。
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