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近くて遠い
第20章 探り合い
───────…
「パリ行きが控えてる。それまで夜は遅くなりそうだ。」
「承知致しました。では食事は…?」
古畑は光瑠にコートを差し出しながら言った。
「いらない。昼食も戻れないだろう。」
コートを受け取って光瑠が言う。
「………古畑、」
「はい?」
光瑠は周りのメイドの目を気にしながらほんのり顔を紅らめる。
「…あれにあんまり仕事をさせないでやってくれ。」
「あれ……とは?」
光瑠の様子を見て古畑が意地悪くとぼける。
「っ…とぼけて、からかおうとするな!」
そう言って光瑠はメイドからやや乱暴にカバンを受け取る。
「……一々反応される坊っちゃんがおもしろくてなりません…」
「坊っちゃんはやめろと言っただろうっ!!」
カッカッする光瑠を見て、使用人が皆、口に手を当てて込み上げる笑いを堪えている。
「もちろん、お任せくだいませ。真希様は光瑠様の大事なお方。」
ニッコリと微笑む古畑。
大事…
真希は大事な…婚約者だ…
「ですが、とても活発な方だ。私共が止めても『私がやりたいだけです』とおっしゃられる。」
古畑の話をきいて、そうやって懸命に働く真希の姿がすぐに浮かんだ。
真希は活力に満ちている。
ずっとかごの中の鳥のようにこの屋敷に閉じ込めていてはいけない…
「あまり無理をさせなければいい。あいつは自分の限界を分かっていないから。」
小さな身体で…
「かしこまりました。」
頭を下げる古畑を見て、光瑠は会社に向かった。
わずか数分前に穏やかな寝顔を見たにも関わらず、もう真希が恋しい…
「病気だな」
温かい日を浴びながら、
一人で少し笑いながら呟いた。
今日はいい日だ。
明日も
そのまた明日も、
きっと────
「パリ行きが控えてる。それまで夜は遅くなりそうだ。」
「承知致しました。では食事は…?」
古畑は光瑠にコートを差し出しながら言った。
「いらない。昼食も戻れないだろう。」
コートを受け取って光瑠が言う。
「………古畑、」
「はい?」
光瑠は周りのメイドの目を気にしながらほんのり顔を紅らめる。
「…あれにあんまり仕事をさせないでやってくれ。」
「あれ……とは?」
光瑠の様子を見て古畑が意地悪くとぼける。
「っ…とぼけて、からかおうとするな!」
そう言って光瑠はメイドからやや乱暴にカバンを受け取る。
「……一々反応される坊っちゃんがおもしろくてなりません…」
「坊っちゃんはやめろと言っただろうっ!!」
カッカッする光瑠を見て、使用人が皆、口に手を当てて込み上げる笑いを堪えている。
「もちろん、お任せくだいませ。真希様は光瑠様の大事なお方。」
ニッコリと微笑む古畑。
大事…
真希は大事な…婚約者だ…
「ですが、とても活発な方だ。私共が止めても『私がやりたいだけです』とおっしゃられる。」
古畑の話をきいて、そうやって懸命に働く真希の姿がすぐに浮かんだ。
真希は活力に満ちている。
ずっとかごの中の鳥のようにこの屋敷に閉じ込めていてはいけない…
「あまり無理をさせなければいい。あいつは自分の限界を分かっていないから。」
小さな身体で…
「かしこまりました。」
頭を下げる古畑を見て、光瑠は会社に向かった。
わずか数分前に穏やかな寝顔を見たにも関わらず、もう真希が恋しい…
「病気だな」
温かい日を浴びながら、
一人で少し笑いながら呟いた。
今日はいい日だ。
明日も
そのまた明日も、
きっと────