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近くて遠い
第22章 距離
────────…



深夜に会社から戻って最初に向かうのは、なんの迷いもなく、真希の眠る部屋だった。



もう何日も寝顔しか見てない…


続く激務に睡眠時間を確保することが最優先であるにも関わらず、光瑠はそれをしなかった。


睡眠よりも真希の顔を見ることが一番身体が癒えるからだ。


目的の部屋に辿り着くと、いつものように注意深く扉を開く。



ギィ────…


そんな扉の軋む音を最小限にする技もすでに習得済みである。



ゆっくりと入っていって真希の白い顔を確認し、光瑠は軽く微笑むとその小さな唇に起こさぬようキスを落とす──



それがこの数日の日課だった。


だが…



「いないっ…!」



そこで小さく寝息をたてているはずの真希がいないのをみて、光瑠は大きく狼狽え、部屋の電気を付ける。


「真希っ!」



辺りを見回すが、どこにもその姿はない。



どこに行った…


布団を大きく剥がして底に触れる。


まだ少し温かい。



慌てながらシャワールームに向かうがやはり真希の姿はない。


「真希っ!」



不安になりながら、光瑠は静かな廊下を出て注意深く辺りを見回す。


時間は深夜2時。


まさかどこかに出歩くような時間ではないだろう…



慌てながら、光瑠は一人で真希を探す。



もしや隼人の部屋に?と思い、扉を開けてベッドを見るがそこには少年しかいない。


どこにもいない…


次第に光瑠は苛立っていた。


それと同時に真希の身に何かあったのでは、と思うと気が気でない。


寝静まった屋敷の中で主人一人が走り回る。



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