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近くて遠い
第31章 空虚な生活
お父さんは気付いたら消えていた三千万という借金のことをしきりに私に聞いてきた。



私はもうあの日々を無かったことにしたくて、口を閉ざしていたけど、隼人が洩らした言葉に私は説明せざるを得なくなって、おおまかな話をした。



有川商事の社長に出会って、三千万を肩代わりしてくれ、お母さんの治療もしてくれたこと。


婚約していたけど、破談になって、お金は返さなくていいと言われ、ここに戻ってきたこと。


その間にあった感情のことは一切話には入れなかったので、私の話には脈略が欠如していた。


なんで?とかいう質問には答えたくない。


私はただ、あったことをとても簡略化してお父さんに伝えた。




お父さんは困り果てた顔をしていた。


だけど、私を大きく振り回してしまったことは分かったようで、そのあとは何も聞かず、小さな声で、すまなかったと言った。



それから、お父さんは不自然に私に優しい。



無理に他愛もない話を見つけては、話し掛け、私に労いの言葉を掛ける。



失った絆を取り戻すかのように…



元に戻ったつもりだったけど、そこにはお母さんもいなくて、お父さんもいるようで昔のお父さんではない。


何もかも変わってしまったのだ。
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