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近くて遠い
第32章 祭り
帰り道、要さんの片腕に抱えられた隼人ははしゃぎ疲れてぐっすり眠っていた。



「すみません…ずっと抱えてもらっちゃって…」



射的で要さんが取ってくれたたくさんの景品を持って隣を歩きながら、私は頭を下げた。



「大丈夫ですよ。」



ニカッと笑った笑顔は夜道で眩しいほどだ。



「なんかまだ口が甘ったるいなぁ…」




舌舐めずりをした要さんに少しだけドキッとした。



「綿あめですか?」



「多分そうですね…」



月が雲に隠れて

より道が暗くなる…



もうすぐ家だ…



「今日は…来てくれただけでも嬉しかったのに、要さんの知らない一面も見れて、すごく楽しかったです…」



「知らない一面…?」



再び雲から顔を現した月が私に向けた要さんの顔を照らした。



「……はい。意外と…少年っぽいというか…なんというか…」


うまく言えないけど、今まで丁寧な物言いをする要さんとばかり接していたから、何だか今日はすぐ要さんを近くに感じた。



「少年!?それは…ちょっとがっかりだなぁ…」



項垂れる要さん。



「あ、そういうところです。」



「えっ?!」



顔を上げて、んんと唸る要さんを見て私はクスクスと笑った。



「要さんは…私の前だといつも丁寧にしゃべられるから…隼人と話したりしてるときの素の要さんが見れるとなんか嬉しいんです…」
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