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近くて遠い
第32章 祭り
「真希さん、じゃなくて…真希って……」



見つめられながら、名前を囁かれて


私は吸い込まれそうになった。



月の下の要さんはとてもかっこよくて、幻想的で…



だけど…





───────真希っ…



「呼び捨ては…」



あの低い声で


囁かれた事を


思い出してしまうから…



「………いきなり、呼び捨てはやり過ぎか。」



そう言って笑った要さんに何故か私はすみませんといって頭を下げた。




「真希さん…」



やっぱり、そっちの方が心地好い…。



「はい。」



「今日のお礼に、今度は僕のおすすめの場所に案内しますね。」



敬語をやめると言いながら、もう忘れてしまったのか、要さんはしっかりとした敬語でそう言った。



「……また会えるってことですか?」



嬉しい。


またこんな幸せを感じる時間を過ごせると思うと…



「またって…バカなこと言わないでくださいよ…」


「えっ?」



片眉を上げた要さんが隼人を片腕に抱いたまま私に顔を近付けた。

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