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近くて遠い
第33章 破壊
ようやく部屋から出ても、渡辺はわなわなと震えたまま何も話さなかった。



「酒田さんっ…!」



いつもにも増した大声を聞き付けた社員が心配して酒田と渡辺の前に数人集まった。



「また…ですか…」



顔を歪ませ社長室をみる社員に酒田はコクンと頷くと、とりあえず近くにあった椅子に渡辺を座らせた。



「ちょっと本当にやってらんないですよ…」


「そんなこと言うなって…」


頭を抱える社員に酒田は困った表情で見つめた。



「だって…暴君過ぎますよ…あれじゃあついて行こうって言う気がまるで起きない…」




僕もやめたい────



その言葉に、酒田は返す言葉がなく黙ったままチラと渡辺を見た。


五十路を過ぎた頃だろうか、項垂れたまま震えていて表情は確認出来ない。



「関根さんはどこに行ったんですか…?せめて関根さんがいれば…」



「それが…」



ここ最近、光瑠が荒れている理由を酒田が話した。

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