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近くて遠い
第35章 過去と現在
─────────…
ぼぅとしたまま
洗濯物を畳んでいると、お父さんがお風呂から上がった音がした。
「お先に」
「うん。」
要さんとのデートから2日ほど経った。
あのあと要さんはしきりに謝ったあと、10時になる前に私を家に送ってくれた。
『ではまた』と言った時の要さんの切なそうな顔が頭から離れない。
短い時間で二回も泣いて困らせてしまった。
その事が反省となって、私の気分を落ち込ませていた。
「真希、ちょっといいか?」
体調がすっかりよくなった隼人が、眠った頃、お父さんがいつになく突然真剣な顔で私を呼んだ。
「どうしたの?」
「……あのな、父さん、ここ最近の働きが認められてな…ここから少し離れた場所で今よりいい仕事がもらえることになったんだ。」
「え?」
突然の話に私は目を見開いた。
お父さんはお風呂上がりに入れた水の入ったコップをじっと眺めていた。
「これまで…真希にどんなに迷惑掛けたか…一生謝っても謝り切れない。
信頼していた会社からは物のように扱われ、リストラされて…柔な心のせいで大事な物を守る義務さえも忘れて…家族を苦しめて…逃げて…本当に父さんはどうしようもない人間だ…」
徐々に涙声になるお父さんの弱々しい言葉を私は黙って聞いていた。
そして、仏壇で優しく微笑むお母さんの写真を眺めた。
「っ……なのに…お前は父さんを見捨てずに戻ってきてくれてっ…」
ぼぅとしたまま
洗濯物を畳んでいると、お父さんがお風呂から上がった音がした。
「お先に」
「うん。」
要さんとのデートから2日ほど経った。
あのあと要さんはしきりに謝ったあと、10時になる前に私を家に送ってくれた。
『ではまた』と言った時の要さんの切なそうな顔が頭から離れない。
短い時間で二回も泣いて困らせてしまった。
その事が反省となって、私の気分を落ち込ませていた。
「真希、ちょっといいか?」
体調がすっかりよくなった隼人が、眠った頃、お父さんがいつになく突然真剣な顔で私を呼んだ。
「どうしたの?」
「……あのな、父さん、ここ最近の働きが認められてな…ここから少し離れた場所で今よりいい仕事がもらえることになったんだ。」
「え?」
突然の話に私は目を見開いた。
お父さんはお風呂上がりに入れた水の入ったコップをじっと眺めていた。
「これまで…真希にどんなに迷惑掛けたか…一生謝っても謝り切れない。
信頼していた会社からは物のように扱われ、リストラされて…柔な心のせいで大事な物を守る義務さえも忘れて…家族を苦しめて…逃げて…本当に父さんはどうしようもない人間だ…」
徐々に涙声になるお父さんの弱々しい言葉を私は黙って聞いていた。
そして、仏壇で優しく微笑むお母さんの写真を眺めた。
「っ……なのに…お前は父さんを見捨てずに戻ってきてくれてっ…」