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近くて遠い
第35章 過去と現在
─────────…




要さんに言われたあの日から、気付きもしなかった想いが溢れて止まらなかった。



もう有川邸を出ていってからしばらく経つ。


なのに



なのに…






こんなにも光瑠さんで胸が溢れている──








引っ越しは明日に迫った。
私は、バイト先にあいさつをして、早めに一人帰路についていた。




私は


あの雨の日、


確かに要さんに一目惚れして、


初めて恋に落ちた…




だけど…


突然目の前に現れた、光瑠さんに知らぬ間に身も心も持っていかれてしまった……



その優しさや言葉は純粋に私に向けられたものでなかった。


なのに私は愛されてると信じて…




苦しい



忘れたいのに…






もうどうしようもなく



光瑠さんが好きだ──




今さら気付いても何にもならない。


実るわけでもない。



頭では分かっている。



だけれども






「会いたいっ…」





人通りの少なくなった道でそう一人呟いた。


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