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近くて遠い
第43章 上司と部下
────────…
静かに置かれたその紙を見て、酒田は目を見開いた。
「関根さんっ…!」
慌てる酒田とは裏腹に、光瑠は椅子に座ったまま静かにそれを眺めた。
「どういうことだ。」
辞表と書かれた封筒から顔を上げて光瑠が目の前に立つ要を見つめた。
「正式に、提出しようと思いまして…」
要が軽く微笑むようにして言った。
「……理由は」
光瑠はそう聞きながら、足を組み替える。
余りに静かなやり取りに酒田一人だけが驚いた様子で立っていた。
「───述べる必要がありますか…?」
「………」
光瑠はじっと要の顔を見たまま黙った。
要は、小さく息を吐いた。
「……どんな理由が合ったにしろ、社長の信頼を裏切ったのは事実ですから…」
酒田がそんなっ──と声を上げた。
「それに…秘書の仕事はもう酒田が十分引き継いでいるし…社長もこんな僕と仕事は出来ないでしょう…?」
要は涼しい顔でそう言って、光瑠の言葉を待った。
だが、じっと見つめてくるだけで返事がない。
要は少しだけ困ったあと、再び口を開いた。
「今まで、ありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした。」
要は会社員として上司である光瑠に丁寧に頭を下げると、酒田にじゃあ、と言ってその場から立ち去ろうとした。
「──言っている意味が分からん。」
ドアノブを掴もうとした時、ふと、光瑠の声が聞こえて要はゆっくり振り返った。
「社長……」
「……関根、お前は一体何を謝っているんだ」
光瑠は組んでいた足を下ろして要に尋ねた。
静かに置かれたその紙を見て、酒田は目を見開いた。
「関根さんっ…!」
慌てる酒田とは裏腹に、光瑠は椅子に座ったまま静かにそれを眺めた。
「どういうことだ。」
辞表と書かれた封筒から顔を上げて光瑠が目の前に立つ要を見つめた。
「正式に、提出しようと思いまして…」
要が軽く微笑むようにして言った。
「……理由は」
光瑠はそう聞きながら、足を組み替える。
余りに静かなやり取りに酒田一人だけが驚いた様子で立っていた。
「───述べる必要がありますか…?」
「………」
光瑠はじっと要の顔を見たまま黙った。
要は、小さく息を吐いた。
「……どんな理由が合ったにしろ、社長の信頼を裏切ったのは事実ですから…」
酒田がそんなっ──と声を上げた。
「それに…秘書の仕事はもう酒田が十分引き継いでいるし…社長もこんな僕と仕事は出来ないでしょう…?」
要は涼しい顔でそう言って、光瑠の言葉を待った。
だが、じっと見つめてくるだけで返事がない。
要は少しだけ困ったあと、再び口を開いた。
「今まで、ありがとうございました。そして、申し訳ありませんでした。」
要は会社員として上司である光瑠に丁寧に頭を下げると、酒田にじゃあ、と言ってその場から立ち去ろうとした。
「──言っている意味が分からん。」
ドアノブを掴もうとした時、ふと、光瑠の声が聞こえて要はゆっくり振り返った。
「社長……」
「……関根、お前は一体何を謝っているんだ」
光瑠は組んでいた足を下ろして要に尋ねた。