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近くて遠い
第44章 根源
─────────…
ゆらゆらとネオンが揺れる中、ぽつりぽつりとシャッターが上がり始める。
まるで街が欠伸しながら、ゆっくりと起きているようだった。
「……久しぶりだな…」
車の中でずっと不機嫌だった光瑠さんはradiceの文字を見ながら静かに呟いた。
「えぇ、本当に…」
懐かしい店名を照らす紫のライト…
もうどうしようもなくて、ここに駆け込んだ時の事を私は思い出していた。
まだ準備中の扉に手を掛けると、光瑠さんが後ろから手を伸ばして開けてくれた。
ふわりと、タバコと香水が交じった匂いが私を包む。
懐かしい…
そう、こんな香りだった…
鏡張りの廊下をゆっくりと進んだ。
そして前から妖艶な雰囲気を纏った女性が現れた。
「すみません、お客様、まだ営業の時間では──」
「幸ママ!!!!」
私が声を上げると、幸ママは身体をビクッとさせて、顔を上げた。
「桜子っ…!?」
幸ママは私をそう呼ぶと、駆け寄ってきて私を抱き締めてくれた。
「久しぶりねっ…!心配してたのよっ…」
淑やかな声…
フワッと優しい香水の匂いが鼻を掠める。
「お久しぶりですっ……」
幸ママは私の肩を持って身体を離すと、私の背後を見て目を見開いた。
「有川様……」
私はくるりと振り返って光瑠さんを見た。
「……しばらくだな…」
少し照れたような顔を見せる光瑠さんがおかしくて私はフフっと笑った。
「本当に…ご無沙汰しています…」
丁寧に挨拶をする幸ママを見ていると、懐かしい日々が甦って来る。
「桜子……元気なの?少し前、ある方があなたのことをしきりに聞きに来ていたけど…」
幸ママが私の方を見て言った。
しきりに聞きに来ていた…?
「あっ…」
私は要さんが、オーナーが心配していましたよ、と言っていたのを思い出して声を上げた。
ゆらゆらとネオンが揺れる中、ぽつりぽつりとシャッターが上がり始める。
まるで街が欠伸しながら、ゆっくりと起きているようだった。
「……久しぶりだな…」
車の中でずっと不機嫌だった光瑠さんはradiceの文字を見ながら静かに呟いた。
「えぇ、本当に…」
懐かしい店名を照らす紫のライト…
もうどうしようもなくて、ここに駆け込んだ時の事を私は思い出していた。
まだ準備中の扉に手を掛けると、光瑠さんが後ろから手を伸ばして開けてくれた。
ふわりと、タバコと香水が交じった匂いが私を包む。
懐かしい…
そう、こんな香りだった…
鏡張りの廊下をゆっくりと進んだ。
そして前から妖艶な雰囲気を纏った女性が現れた。
「すみません、お客様、まだ営業の時間では──」
「幸ママ!!!!」
私が声を上げると、幸ママは身体をビクッとさせて、顔を上げた。
「桜子っ…!?」
幸ママは私をそう呼ぶと、駆け寄ってきて私を抱き締めてくれた。
「久しぶりねっ…!心配してたのよっ…」
淑やかな声…
フワッと優しい香水の匂いが鼻を掠める。
「お久しぶりですっ……」
幸ママは私の肩を持って身体を離すと、私の背後を見て目を見開いた。
「有川様……」
私はくるりと振り返って光瑠さんを見た。
「……しばらくだな…」
少し照れたような顔を見せる光瑠さんがおかしくて私はフフっと笑った。
「本当に…ご無沙汰しています…」
丁寧に挨拶をする幸ママを見ていると、懐かしい日々が甦って来る。
「桜子……元気なの?少し前、ある方があなたのことをしきりに聞きに来ていたけど…」
幸ママが私の方を見て言った。
しきりに聞きに来ていた…?
「あっ…」
私は要さんが、オーナーが心配していましたよ、と言っていたのを思い出して声を上げた。