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近くて遠い
第9章 夢と現実
「昨日の威勢がうそのようだな。金の前に服従する気持ちはどうだ?」
ニヤリと笑って顎を掴まれ、親指で唇をなぞられる。
「母を…母をどうか…」
か細く呟く私をみて、有川様は愉快そうに笑う。
「お涙頂戴だな。」
そういうと、私の唇をまた勢いよく塞いだ。
絡められる舌から伝わるお酒の味…
こんな乱暴いやだ…
それでも身を売った私には抵抗する権利すらない…
「はぁ…はぁ…」
「ふっ、物欲しそうだな。」
苦しいのに、身体が勝手に熱を帯びてしまう…
「物欲しそうになんか…」
「これからいくらでもかわいがってやる。お前は一生俺のものだ。」
身体全体に染み渡るような低い声で有川様が耳元で囁く…
頬に微かに触れる髪の毛
抜け出せない…
動きたいのに動けない。
荒波に飲まれるようにして私は有川様に引き込まれていった。
「本名は何だ。」
「え…?」
「まさか桜子が本名だなんて、そんな愚かなことをしていないだろう。」
本名……
「………真希……です…」
しばらく呼ばれていなかったせいで、思い出すのに時間がかかった。
ここずっと桜子として、慣れない夜の世界で必死に生きた。
本来の自分を見失うだけじゃなく、見失っていることにすら気付かずにいたことが、たまらなく恐ろしく感じた。
「真希…か。」
ゆっくりと有川様が反復した。
常に正直に
"真"実と
"希"望を胸に生きてほしい
私の名前。
私の原点…
ごめんなさい、お母さん…
「明日の夕方、お前の家に使いを送る。荷物はいるものだけ運ばせるんだな。」
「………分かりました…」
静かに呟く私を有川様はただ、じっと眺めていた。
ニヤリと笑って顎を掴まれ、親指で唇をなぞられる。
「母を…母をどうか…」
か細く呟く私をみて、有川様は愉快そうに笑う。
「お涙頂戴だな。」
そういうと、私の唇をまた勢いよく塞いだ。
絡められる舌から伝わるお酒の味…
こんな乱暴いやだ…
それでも身を売った私には抵抗する権利すらない…
「はぁ…はぁ…」
「ふっ、物欲しそうだな。」
苦しいのに、身体が勝手に熱を帯びてしまう…
「物欲しそうになんか…」
「これからいくらでもかわいがってやる。お前は一生俺のものだ。」
身体全体に染み渡るような低い声で有川様が耳元で囁く…
頬に微かに触れる髪の毛
抜け出せない…
動きたいのに動けない。
荒波に飲まれるようにして私は有川様に引き込まれていった。
「本名は何だ。」
「え…?」
「まさか桜子が本名だなんて、そんな愚かなことをしていないだろう。」
本名……
「………真希……です…」
しばらく呼ばれていなかったせいで、思い出すのに時間がかかった。
ここずっと桜子として、慣れない夜の世界で必死に生きた。
本来の自分を見失うだけじゃなく、見失っていることにすら気付かずにいたことが、たまらなく恐ろしく感じた。
「真希…か。」
ゆっくりと有川様が反復した。
常に正直に
"真"実と
"希"望を胸に生きてほしい
私の名前。
私の原点…
ごめんなさい、お母さん…
「明日の夕方、お前の家に使いを送る。荷物はいるものだけ運ばせるんだな。」
「………分かりました…」
静かに呟く私を有川様はただ、じっと眺めていた。