この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
不良の彼は 甘くて強引
第29章 天秤にかける
華麗な右の手指をそっと頬に寄せ、真っ直ぐ下ろした左足に右足首をのせて…
釈迦の救済からあぶれた衆生たちを思って座っている──
憐れんでいるの?
微笑んでいるの?
…どうしてあなたは幽かに笑っているように見えるのだろう。
それは救いようのない人間たちへの…諦めからくる笑みだろうか。
でも、それでも人々は
" 彼 " に救いを求めた。
拭えぬ罪を背負った人々にとっては…彼が最後の頼みなのだから。
末法思想のはびこる世の中で、人々は何かにすがらずにはいられなかったのだ。
曖昧さを
儚さを
不完全さを…
それらを美徳としてきた彼等でさえもが、最後の最後に求めたのは絶対的な存在…
唯一の赦し。
「──…」
本当に、誰でも赦すの?
どんな人でも…──あなたは助けるの
それが本当に
正しいことなのですか?