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縛られたい
第10章 甘い夜〜まりあ
携帯のアラームが遠くで鳴っていた。

「あっ…。
そろそろ予約の時間だ」と阿部さんが言う。

「アラーム?」

「いや、絶対時間とかわかんなくなると思ったから…」と照れ臭そうに笑うけど、
そういう処に真面目さが見えて笑ってしまう。


室内のシャワーを軽く浴びてから、
浴衣に着替えてみる。

髪を上げて一本の簪で留めると、
「うわ。
その髪型、良いね?」と、
少し照れた顔をして、
引き寄せてキスをしてくれる。


「あれ?
ひょっとして、ノーブラ?」

「勿論、ノーブラノーパンですよ。
ショーツも濡れちゃってたから、洗って干してます」と言うと、

「うわ。
エロいな。
ヤバい。
それだけで俺、また勃ってくるかも」と笑う。


私も恥ずかしいけど、
自分から手を繋いで館内図を見ながら露天風呂に向かった。

露天風呂の中は、
まだ、外も明るい時間で、
とても開放的な感じがした。

開放的過ぎて、
なんていうか…健康的ですらあって、
あまりエロスは感じられなかった。


この前のようにお互いの身体を洗い合ってから、
のんびりお湯に浸かって、
新緑を観ながら川のせせらぎの音を聴いていると、
とてものんびりした気持ちになる。


「熱くてのぼせちゃいそう」と言うと、
「じゃあ、俺の膝に乗っかってみて?
そしたら、上半身はお湯の外に出るから、
涼しくなるよ?」と言うので、
「ん?どっち向きに乗れば良いの?」と言いながら、
向かい合って跨ぐように膝に乗ると、
「うわ。
そうくるんだ?」と照れ笑いをして、
キスをしてくれる。

「あれ?向き、違ってた?」と言うと、
笑われてしまった。


長身だけど少しメタボっぽい阿部さんは、
熊みたいだなって思うと可笑しくなってしまって笑ってしまう。


「えっ?何?」

「まさとさん、熊さんみたい…」と言って、
胸元を触る。

「ちょっと毛深いから?
ヤダ?
脱毛しようか?」

「男らしくて素敵ってことですよ?
でも、ちょっとメタボ気味かな?
恰幅が良い方が好きだけど、
健康が気になります。
健診とか受けてます?」

「いや、フリーランスになってからは忙しくて…」

「じゃあ、まずは人間ドック、
行ってくださいね?
私たち3人を養うんだから!」と言うと、

「こっちは元気なんだけどな?」と笑った。
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