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遠き隣人
第5章 心理戦
『優子ぉ!ちょっと、あんたのリップ・・・いや何でもない』
(優子の使ってるリップが1番いいんだけど・・・今日は仕方ないか)

《みんなでそうして、私を避けていればいいのよ。明日は我が身だからね!あんた達!見てなさいよ》

優子は周囲一体を睨みつけ、顔を机に伏せる。
それも、担任の江梨が来るまでで、担任が教室に来る頃には、いつも教室内は落ち着いている。

日増しにクラスの緊張感は高まる一方でピリピリと張り詰めた空気は、江梨にさえ伝わるくらいだ。
シ〜ン••••
《この張り詰めた空気は、息が詰まりそうだわ》

ぷるるる••••。
《この先生も何も知らないんだもんね?また同じ事の繰り返しね••••優子の様子はどう?そっちから見える?》
詩織は絢子にメールを送った。
教科書を立てて、前に座る生徒の陰に上手く隠れてメールをやり取りするのは、彼女らの日課になっていた。

《居ても立ってもいられないような感じね。この際、クジ引きかジャンケン大会にでもしたら?公平でしょ?》

こんな時、何処の学校もグループが少なくて2つ。
多くても3〜4つに分離されるのは何故だろう。

ここで気をつけておかないといけないのは、イジメられやすいタイプの子である。犠牲になりやすいからである。

《でもさ、ダメじゃん?あいつらにバレるよ。クジ引きやジャンケン大会とかで選ぶと、奴らの目的は私達の誰を“個人的に”選ぶか?だもんね。》

この張り詰めた緊張感の中で口火を切ったのか意外にも先生だった。

「バンッ!」先生は教壇を力強く叩いた。

あなたたち…いったい何なの!理由があるなら誰か説明しなさい!

シーン…貼り付けていた空気はより一層とどんよりした。

何でもありません。早く授業を始めてくださいよ。

委員長…あとで校長室にくるように! 

詩織はビクッとしたかと思うと身体をぶるぶると震わせながら魂ここに在らずといった面持ちであった。

なに?何であんなに怖がっているの?理解できない。

昼休みが終わった頃に江梨の嫌な予感は的中することになる。

詩織が逃げ出したのだった。

「ちょっと…詩織さん知らないかしら?」

詩織なら早退しました。気分がすぐれないとかで。

あ、先生は赴任してきたばかりで知らないと思いますが、詩織は生理痛が酷くて

毎月ああなんですよ。気にしないでください。






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