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ムッツリ最高
第16章 旅4 インフィニティスパ

 スパの入り口は男女別々で、更衣室があり、その奥に屋上に広がるスパがあるのだ。
 この高原の一番見晴らしがいい場所にあるホテルの屋上。全長25mという巨大な湯船は、まるで空中に浮かんでいるようだ。
 スパの手前には、リクライニングチェアが並び、左右には南国風の植え込みがあり、その奥にはシャワーブースがが左右に三つずつ配置されている。

 私たちがスパに入った時間は6時半で、日暮れの早い山間では、すでに西の山々に薄暮を残して、夜の帳が下りようとしていた。

 入り口は彼と別になるので、そこで一旦別れる。私が更衣室から抜けると、彼はまだ来ていなくて、私は肩から大きなバスタオルをかけ、急いで湯船のほうに向かう。

 彼がいれば、まだ、耐えられるけれど、こんなむちむちの中年女が、こんないやらしい水着を着て歩き回るなんて、とても無理だわ・・・

 でも幸い、この時間帯は大抵の人は夕食時間のようで、スパにはほぼ人がいなかった。

 私はバスタオルを外し、リクライニングチェアにそれを置くと、そそくさと湯船につかった。

 湯船の淵が一段下がって、その先に水がためてあり、風呂に入った目線からは水際まで湯しかみえず、湯船の淵の間接照明が青く光っている。

 とても幻想的で美しい。
 高原の空気は、夏であっても冷たく、湯が温かく、これなら何時間でも入っていられそうなぐらいだった。

 広い湯船には、私と、右奥にカップルが一組だった。
 間接照明しかないスパでは、カップルの影がやっとわかる程度だったけれど、その寄り添うような姿に、私はキュンとする。



これから、彼が来てくれたら、私も、あんな風に寄り添うのかしら・・・?



 その時、後ろから湯船に人が入る音がして、ドキッとして振り返ったけれど、それは彼ではなく、他の中年男性だった。

 その男性は、私から2mほどのところで湯船に身を沈めた。

 普段、混浴をすることもないので、居心地悪くなり、私はもっと左奥に場所を変える。



(こちら側は、さっきのところより暗いから、湯船に入ってきた彼に、私がわかるかしら)



 そう不安に思って後ろを振り返った時、彼が見えた。黒い大きめの半ズボンタイプの水着を着て、眼鏡は、外している。

 やっぱり彼は、周囲を探すように見回している。
私は思わず立ち上がる。

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