この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
 車を降りた途端、蝉の大合唱が耳に届いた。スーパーのビニール袋を提げて純は鉄筋コンクリート造りの4階建てマンションの階段を駆け上がる。
 3階に辿り着いた彼は等間隔に並ぶ扉の部屋番号を確認しながら共有通路を進んだ。

(303……、ここだ)

 303号室の扉横の呼び鈴を鳴らすと、ややあって扉が開いた。赤い顔をした莉子が倒れ込むように純の胸元めがけて飛び込んでくる。

「純さんっ!」
「大丈夫?」

 支えた彼女の身体は熱を持っていた。素っぴんにパジャマ姿の莉子を片腕に抱いて純は莉子の自宅に上がった。

 これまでもマンションの前まで送り迎えはしてきたが、莉子の自宅に入ったのは今日が初めてだ。
 だが、今は初めて訪れた恋人の部屋をゆっくり観察する心の余裕はなかった。

「ごめんね、せっかくのデートが……」
「いいんだよ。とりあえず水分摂ろうか。スーパーで莉子の好きそうな物色々買ってきたんだ」

 本来なら今日はデートの予定であった。莉子を迎えに行く準備をしていた矢先に届いた莉子からのメールには、彼女が熱を出してしまった事とデートのキャンセルを詫びる内容が綴られていた。

 ベッドに上半身を起こした莉子は純に渡された冷えたペットボトルを傾け、ゴクゴクと喉を鳴らしてスポーツドリンクを飲み干した。

「熱は何度だった?」
「さっき測って38度」
「まだ高いね……。薬は飲んだ?」
「朝に飲んだけど、お昼ごはん食べてないからお昼の薬が飲めなくて……」
「薬は飲まないとね。プリンでも食べる?」
「プリン食べたいっ!」

 プリンの単語に目を輝かせた莉子を見て、このセレクトで間違いなかったと安堵した。他にもヨーグルトやグレープフルーツ、レンジで温めるだけのレトルトのお粥も購入してある。

 プリンの上蓋のフィルムを剥がしてスプーンと一緒に渡してやると、彼女は喜々として黄色くてぷるんとした物体を口に運ぶ。純はその間に、枕元でぬるくなっていた氷枕の氷を新しいものに取り替える作業をキッチンで行った。

 独り暮らしの身では氷枕を作るにも薬や食料品の買い出しも自分でやるしかない。体調不良の中で何もかもをひとりでやらなければならない大変さは、純自身も独り暮らしであるからよくわかっている。
/146ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ