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雨の降る夜は傍にいて…
第5章 秋冷え…
 6 恋愛観

「ひっ、ひっく、ひ、ひ……」
 約5分程だろうか、わたしは彼、大塚浩司の肩を借りて号泣し、ようやく落ち着いてきた。
 そして嗚咽も止まり、はしたなかったが鼻をかんだ。

「ふうぅ…」

「おっ、少し落ち着いたかな」

「あっ、す、すいません」
 わたしは慌ててカラダを離した。

「ほ、本当にすいませんでした、ご迷惑をお掛けしちゃって…」
 わたしは立ち上がって頭を下げる。

「あ、いや、そんないいよ、大丈夫だよ」
 と、彼は優しく微笑みながらそう言った。

 ドキッ、ドキドキドキドキ…

 その笑顔に一目惚れをしたくらいだから、急に胸がドキドキと騒ついてくる。

「それに、美人の涙には弱いからさ…」

「そ、そんな…」
 本当に穴があったら入りたかった。

「俺の娘もさぁ、中1になったんだけどミニバスからやっててさ…」

「えっ、娘さん…」
 左手の薬指に指輪が光っている。

 あ、そうか、結婚してる、そうだよね…

 見た目は40歳くらいか、この年齢で独身の筈がない。
 いや、この年齢で独身であったならば、わたしの心が惹かれる筈がないのである。

 わたしは、やや、ファザコン気味であった…

 だから大学在学中に怪我をして無念の想いでバスケットプレイヤーを断念し、迷走をし始めてから惹かれた男達の殆どが年上の、いや、うんと年上の男ばかりであったのだ。
 しかも、そんな男達を選ぶモノだから、全員皆、既婚者であったのである。
 どうやらそんな大学在学中の時代の男の好みは、既婚者という自分をしっかりと持っている男の魅力に魅かれる、魅了される、惹かれる傾向の恋愛観があったのだ。

 そして無意識に、父親の、父性というモノを求めていたようなのである…

 わたしは小さい頃から父親が大好きであった、母親とは決して不仲な訳ではないのだが母親よりは父親であった。
 そして妹がいるのだが、妹は母親派であったのだ。

 だから当然一目惚れをするくらいであるから、既婚者であり、妻子持ちが普通であり、わたしの中では自然であった。

 そして、だからかもしれないが

 既婚者という事に抵抗もないのだ…

 だが、いや、だからこそ、そんな恋愛観であったが故に、必ず二人の間には距離を置き、お互いに都合のよい時に逢う、そんな関係ばかりをしていたのである。






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