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雨の降る夜は傍にいて…
第6章 小夜時雨(さよしぐれ)…
 18 万が一の悲劇

「だけど…
 万が一が………さ…
 万が一があったらさ、取り返しのつかない事になってしまう……
 そうだろう…」
 そう、浩司は云ってきたのだ。

「俺もそうだけど…、ゆり、お前の失うモノの方が…
 計り知れないくらいに……
 大きい……はずだ…」
 と、彼は続けてくる。


 ああ、そんな事…

 本当は…

 本当は、とうに分かっている…

 だけど…

 だけど…

「だけど…
 別れたくないのっ…」

 わたしは小さく叫んだ。

「万が一…
 万に一つの間違いを…
 いや、俺達のこの関係が見つかってしまったら………」

 ……俺は家庭を失うかもしれないが、それはゆりと知り合う前から考えていたし、ある程度の想定や、覚悟はしているから構わない…けど…
 けど、ゆり、お前の場合は…

「俺の比じゃないくらいに、いや、とてつもなく大きく、本当に今の全てを失ってしまうかもしれない……」

……せっかく、順調に上手く来ているこのバスケット指導…

 そして、自分の娘だけども敢えて言わせて貰えは、来春からの未来の最高の選手と、それに付随する4人の素晴らしいメンバー達…

 そして今度のウインターカップから始まる、輝かしい、未来の栄光…

 そして教師という地位…

 大きなスキャンダルとなって、ゆりにとってのバスケットという存在自体が全て失くなるかもしれない…

「ゆりという存在意義自体が、全て否定されてしまうかもしれないんだぞ…」
 いや、間違いなくそうなるはずだ…

 浩司はわたしの目を見つめ、そう強く、言い切ったのである。

 そんな事…

 そんな事、とっくに分かっている…

 それでも…

 それでも、わたしは…



 わたしは…



 わたしは…








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