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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 3 見学者

 とにかくこの水曜日の午前中の3時間が憂鬱であった。
 しかも1年生から3年生までを順番に授業をしなくてはならなかった。 
 なぜか、この私立高校の理事長からの指名の指示によるモノなのである。
 昔からこの母校はバスケットボール部に力を入れており、そしてその女子バスケットボール部の歴代でもわたしが有数な優秀なプレイヤーであり、特に理事長に目を掛けられての指示らしいのだそうだ。

 そして運命の出会い、いや、再会は3年生の授業の時に起こったのである。
 それは3年生の特別進学クラスの授業の時であった。
 この略して特進は毎年東大合格者を出す程の優秀なクラスなのである。
 そして3年生の体育の授業…
 学校側からも適当に怪我をしない程度に、生徒のリフレッシュ目的でやって欲しい、といわれる位の特別感のある授業なのだ。

 リフレッシュ目的…
 だから余計な事はせずに、ただただ1時間、ドッジボールで遊ばせている。
 そして3年生達もワイワイと気楽に楽しんでやっていた。 
 たがそんな気楽な授業に見学者がいたのである。

 ええと、風邪の為、見学…か。
 ちゃんと見学の届けの用紙まで出ていた。

 木村啓介…と
 えっ、何、野球部だって…

 クラス名簿に野球部と書いてある。

 確か、特進クラスは運動部はダメのはずじゃなかったか…
 
 逆にそれだけ優秀なのか…

 わたしは直接本人に確認してみようと思い、探したのだがいない。

「あー、けいすけは保健室にいますよ…」
 クラス委員がそう云ってきた。

「じゃ、ちょっと見てきますから、適当にやっててね」
 そうクラス委員に告げ、保健室へと向かったのだ。

 特進クラスに野球部が…
 それがわたしにはなんとなくだが、気になったのである。

 木村啓介、まだ二回目の授業だし、顔が良くわからないわ…

「失礼しまぁす…」
 保健室の先生は不在であった。
 わたしはそっと保健室に入り、ベッドの仕切りのカーテンをそうっと開く。

「木村くん、いるの…」
 
「あ、はい…」
 すると彼は返事をして、ゆっくりと起き上がる。

「えっ」

 な、なに…

 え、まさか…

 わたしはその木村くんの顔を見て驚いて、いや、驚愕してしまった。

 ゴロゴロ、ゴロゴロ…

 その時、西の空から春雷の雷鳴がとどろいてきたのだ。



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