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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 22 時間の経過

 そのウインターカップの次の記憶は、ただしのお葬式に参加したという事であったのだ…

 そして更にいつの間にかに年が明け、1月の新人戦が目前の頃の15日過ぎから記憶が再びはっきりし始めたのである。

 そのくらいに当時のわたしには、このただしの突然の死は衝撃的であり、ショックな出来事といえたのだ…

 ただあまりにも衝撃的過ぎて、そして実感が湧かなく、悲しみも少なかった。
 初めてちゃんと悲しみを感じ、泣き腫らしたのは四十九日の法要に参加した時であったのだ。
 その墓前にしがみ付き、泣き狂うただしの母親の姿を見て、初めてただしの死を実感したのであった。

「ただしくんの為にもゆりはバスケットボール頑張らねば…」
 当時の親友や、チームメイトに励まされ、表面上は立ち直ったフリをしていた。

 そんな簡単なモノじゃない…

 わたしは心の中でそう思っていたのであるが、チームのキャプテンに指名されてしまったのである、責任上、頑張らねばならなかったし、頑張るしかなかった。
 そしてそう頑張る事と、時間の経過がただしの死という事実を薄らぎ、忘れさせてくれたのである。
 いや、決して忘れる事は出来ないし、出来る筈もないのであるが、薄れさせてはくれたのだ。
 それ位に毎日の練習はハードできつく、そして全日本某の選抜選手にも選ばれ、刺激のある毎日を送れたので、かなり助かった。
 そして若さと、記憶の曖昧さ、日々の刺激のお陰で夏前には完全に復活したのだ。

 人間なんてそんなモンなのだ…
 と、わたしの心の中のもう一人がそう言っていた。

 青春は前向きに生きる事でもあるのだ…
 そう必死に、自分の都合の良い様に日々言い訊かせていたのである。

 そして月日の流れはいつの間にか、本当にただしの死を中和してくれていた…
 そしてついに自分に火の粉が降り掛かり、それを追い払い、振り切るのに必死の日々がその後訪れたのだ。
 だが、それは既にただしの死とは全く関係はなく、そのせいもあって彼の死は完全に心の隅に追いやってしまったのである。


 だが、あれから7年、こうして弟の啓介くんの出現により、また、ただしの思い出がリアルに蘇ってしまっていたのであった…



 

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