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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 24 性春のエネルギー

 青春の、いや、性春のモヤモヤが啓介くんのあとひと押しの、ひと皮向ける成長を妨げているのであろう…
 わたしには分かっていたのである。

 あの水曜日の夜を経て、わたしは精神的にも変わり、プレイスタイルも安定した。
 そしてただしも変わった。

「なんか最近調子よくってさぁ」
 ただしはよくそう云っては走り、素振りをしていた。

「もう、たーちゃんの手の平、マメでガサガサで痛いからぁ」
 そのただしの手の平はバットの素振りの蓄積により、マメだらけでガサガサに固かったのだ。
 だが、そんな手の平がまた違う意味で心地よかったのであった。



 啓介くん、啓ちゃんも、きっとモヤモヤしてんだろうなぁ…
 わたしはそんな加藤先生の言葉でふと、再び、昔の、水曜日の夜の逢瀬を思い出してしまうのだ。
 そして目では無意識にただしと瓜二つの弟の啓介くんの姿を追ってしまっていた。

 えっ、やだ、わたしったら、何を考えてんのっ…

 邪な、いやらしい想いにドキドキとしてしまっていたのである。

 ああ、ダメだ、最近ご無沙汰だから、欲求不満なのかなぁ…

「美紀谷先生っ、次のメニューはっ」
 そんな事を考えていたら、バスケ部キャプテンが声を掛けてきた。

「あっ、ごめん、じゃあ…」

 ダメだ、ダメ、来週から関東大会予選が始まるのだ…
 わたしは気を引き締める。

 ただ、高校生は有り余るエネルギーに溢れているのだ…

 ゴロゴロ、ゴロゴロ…

 春雷の雷鳴が体育館の中まで鳴り響いていた。

 季節は春、そして青春の象徴である夏へと徐々に向かっていく…






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