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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 32 錯覚…

 ゴロゴロゴロゴロ…

 再びすぐ近くで春雷の雷鳴が鳴り響く。

「たーちゃん…なの…」
 そして俺は、そのゆり姉ちゃんの呟きの返事の代わりに強く抱き締めた。

「ああ…」
 ため息を漏らしてくる。

 ゆり姉ちゃんは完全に、混乱、いや、錯覚をしているようであった。
 想いが7年前に跳んでしまったかのようであったのだ。

 だが俺には、兄貴のフリをするしか方法がなかったのである。

 それは

 この心の衝動は抑える事ができないからだ…

「ゆ、ゆり…」
 兄貴になり切りそう呟く。

「ああ、た、たーちゃん…」
 戸惑った声で呟いてくる。

 そして俺達は再び、口吻を交わしていくのだ。

 ああ…

 ゆり姉ちゃん…
 激しく舌を絡め合い、唾液を交わしていく。
 俺は更に強く抱き締めながら、管理室のソファーへと押し倒す。

「ああ…」
 すっかりゆり姉ちゃんは、カラダの力が抜けてしまっているようであった。

 ブツンっ…

 その時、再び、停電した。
 目の前が真っ暗になる。

 ゴロゴロゴロゴロ、ズズーン…

 落雷の地響きと、稲光の光りが一瞬だけ俺達を、いや、目の前を照らしたのだ。

「あっ…」

 そして目の前に感極まったゆり姉ちゃんの顔があった。

 そして俺は手でゆり姉ちゃんの胸をまさぐり、Tシャツの中に入れた。

「い、痛っ…」
 多分、手の平のマメが痛いのか。
 だが、もう衝動を抑えられない。
 胸の柔らかさが更に心を昂ぶらせてくる。
 既に、ギンギンに、ズキズキと昂ぶっていたのだ。

 ゴロゴロゴロゴロ…

「ゆり…」
 
「はぁ、たーちゃん、ううん、啓ちゃん…」
 突然、ゆり姉ちゃんが俺の名前を呼んできたのだ。
 不意なその呟きに思わずビクッとしてしまう。

「わかったから…離して…」

「う、うん…」
 その言葉が、俺を現実に戻してきた。
 抱き締めていた手を緩める。

「啓ちゃん、わかったから…
 ここは体育館の管理室だから…
 ここは出ましょうよ…」

「あ、う、うん…」

 やはり…

 兄貴にはなれなかった、いや、勝てなかった…

「させて…あげる…から…」 
 
 えっ…
 するとゆり姉ちゃんはそう云ってきたのである。

「ゆ、ゆり姉ちゃん…」







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