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雨の降る夜は傍にいて…
第2章 春雷
 37 乗り越える

「啓ちゃん…お待たせ…」

 開き直ったわたしはバスタオル一枚だけを纏って、彼の前に立つ。

「ねぇ、電気消してよ…」


 ゴロゴロゴロゴロ…
 春雷はまだ鳴り響いていた。

 そして電気を消し、暗くなった部屋でわたしはバスタオルを外す…

 ゴロゴロゴロゴロ…
 その時、春雷の稲光が一瞬だけ、わたしの裸体を浮かび上がらせたのである。

「あっ、ゆ、ゆり姉ちゃん…」
 啓ちゃんは呟いた。

「いいのよ、啓ちゃん…」
 そう云って、わたしは啓ちゃんに抱き付いていく。

「あっ、ゆ、ゆり姉ちゃん…」

「啓ちゃん…」

 そしてわたしは啓ちゃんに口吻をしていくのだ。

 ああ…

 これで…

 これでいい…

 ただしを…

 啓介、啓ちゃんを…

 乗り越えるのだ…

 もう、ただし、たーちゃんとの錯覚や混乱はしない。

 目の前の啓ちゃんを…

 啓ちゃんを男として、いや、男にしてあげるのだ…

「ああ、啓ちゃん…」


「ゆ、ゆり姉ちゃん…」





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