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甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
片眉をピクリと上げて、気をつけなければ…と気を引き締める。
ほんの数秒間の密室で嬉しそうに私を見てくる。
この扉が開けば、ちゃんと副社長の顔に戻るのを知っているから。
不意に近付いてくる唇にも動揺することなく受け入れて。
アイコンタクトで少し怒ってみせるけど、クスッと笑って2回目のキス。
「んんっ…」
一瞬、舌入れられた。
ちょうど階に着いて扉が開く。
「副社長、おはようございます」とフロアにて出迎える秘書課の人たち。
「おはよう」といつも通りスマートに通り過ぎていく。
私もそれについて副社長室へ入る。
その日のスケジュールをお伝えしながら選んでおいたネクタイを結んで差し上げる。
デスクに腰掛けて少し屈んで頂くと自ずと顔は近くにくるわけで。
3回目はないです、と牽制してみる。
「3回目じゃないよ?」
「え…?」
まだ結び終えていないのに顎クイされてキス。
すぐに離れてまたキス。
「ちょ、ちょっと……結べません」
「うん、こっちが先……」
そう言われて再び唇を奪われた。
結局また舌を入れられて応えてしまう。
トロンとした目をした後に困り顔なんて意味がないわね。
「もうダメです……」と最後の結び目をキュッと上げる。
「うん、ごめん、調子乗り過ぎた」ってデスクに座り仕事に取り掛かる副社長にホッとする。
こっちはこっちで火照りを抑えるのに必死で慌てて珈琲をお持ちして立ち去る。
「え、今日は一段とフェロモン出てますよ、藤堂さん」
急に傍まで来てそう言ってくる先輩秘書。
ヤバい、顔、直ってなかった!?
あくまで冷静に。
「そうですか?いつもと変わらないつもりなんですけど」
「またまた〜!上手くいってるんでしょ?カレと」
「え?え?」
チラチラと副社長室を見られるので、まさかバレたんじゃないかと本気で焦る。
「大丈夫、秘書が恋愛しちゃダメなんて規定ないし仕事は仕事で割り切って恋愛楽しんでね?」
「そうそう、副社長に振り回されてても今日はデートなんです!て、ちゃんと残業はお断りして良いんだからね?」
ん?ん?ん?
何か変だぞ。
副社長……とって訳ではない!?