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甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】
ちょうどやりたいこともなかったし、そこまで買ってくれるならその船に乗ってみようって。
当時アルバイトしていたアミューズメントパーク内のレストランで私を見つけたと言っていた。
辞めた後も色々と捜し回ってたみたいでたまたま街中で熱くナンパしてきたのには驚いた。
本気で変な壺買わされるって思ったよ。
何度も何度も私のアルバイト先に足を運んで熱くプレゼンしてくるのには正直参ってその熱意に折れて会社へ見学させてもらったのがキッカケかな。
ちゃんと筆記試験もあって誰もが入社出来る訳でもなく、そこはプロの集団だったことがわかった。
試しに受けたら満点だったことから益々逃げれなくなり、働き出して今に至る。
今まで色々と叩き込まれたよ〜
資格は片っ端から取らされた。
接客サービスマナー検定やら秘書検定やらリトルマーケティングは勿論のこと、TOEICまで。
接客業務で必要な資格ほとんどを短期間で身に付けた者達はプロであり、派遣のスペシャリストとして在席している。
こんな私でも任されたエリアがある。
色んな店舗を回って接客指導しながら常に行列店に立っている。
エリアマネージャーという名札をつけて的確に押し寄せるお客様を捌き切るのだ。
そう、それが私の求めていた仕事で接客の素晴らしさを肌で感じ充実感に浸っていたのに。
急に社長から人手が足りないとレンタル彼女の登録をさせられた。
写真にボカシをいれると顔バレしないし指名もそんなにかからないとの言葉を鵜呑みにした私も悪いけど。
今じゃ月3、多いと月5回は指名される。
そしてリピーターに繋げてしまう。
接客のプロだからか、ついつい完璧に熟す癖が。
「椿さん、大丈夫っすか?」
運転席から声がして仕切りカーテンを開けた。
バックミラー越しに目が合うジロウの顔に癒やされる。
「うん、大丈夫」
「今夜マッサージしますんで」
「ありがとう、ジロウ〜」
ジロウは可愛い可愛い私の良き理解者だ。
恥ずかしがり屋だけど結構力持ちだったり、甘いマスクなのに女性慣れしてない感じがウブで好き。
ゆるふわパーマのマッシュヘアで笑うと目尻にクシャッとシワが出来る。
私の運転手兼マネージャー業務をしてくれている、小川ジロウくん、3つ下の23歳。