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甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
吉原さんに言うべき事じゃないって頭ではわかっているのに、溢れ出す想いが、不安が、怒りが止まらない。
「途中で言ったら最後まで関口さんに対価通りの接客が出来たの?全てを投げ出して此処に来たでしょ?」
「それの何がいけないの!!」
今まで見せた事もない、出した事もない声で、顔で吉原さんに叫んでいた。
「とりあえず、今はまだ処置中で何とも言えない」
もう3時間近くになるそうです。
「こちらでお待ち下さい」と処置室から離れた待合室で私たちは待機している。
さっきの電話口での吉原さんから聞いた内容では、デート現場から少し離れた場所で火災があったらしく、たまたま近くに居たジロウがまだ逃げ切れてない人の救助に入ったようで火傷を負ったって。
病院に搬送される際、私たちの居た場所を通らなければならなかったというわけだ。
上半身に火傷、意識混濁。
持ち物の中から名刺を見つけ、救急隊員からUNEEDに連絡が入った。
吉原さんが駆けつけた時にはもう処置に入っていた。
初見では火傷の具合は4段階中2だと言われたらしい。
意識は戻ったり眠ったりするが痛みで失神したりするそうだ。
震えながら聞いて、吉原さんが肩を抱いて擦ってくれた。
「すぐに連絡入れなかったのは私の判断、ごめん……でもきっとジロウもそう願ったはずよ、あなたの為に」
言ってる意味は100%理解出来る。
逆の立場なら私もそう願ったはずだ。
でも、でも、心が追いつかない。
この目で確かめるまでは何もかも嘘の世界な気がした。
お願いだから嘘だと言って。
私から離れたら許さないから。
どんな姿になっても、私はジロウの傍に居るんだからね。
「ジロウ………ジロゥ……っ」
「大丈夫、大丈夫、ジロウ今、凄い頑張ってるよ……応援してあげなきゃ」
そう言う吉原さんの声も震えてる。
パタパタとこっちに向かってくる足音。
祈るように身体を縮こませていた私の耳に飛び込んできた。
「小川ジロウの母です、息子は?」