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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】





「わかってるよ、わかってるんだ……俺がめちゃくちゃなことを言ってるのは……でももうしないでくれ、俺が独占契約してるんだから」




「月〜金以外は私の自由ですよね?そこまで縛る契約ではないので」




「なっ!」




握った拳が僅かに震えてる。
こんなバカ正直に手の内を話す必要はないだろう。
でもここで「わかりました」と頷いてしまえばクライアントの思い通りに。
吉原さんにも引いちゃダメな時は引くなって教えてもらったんだから。
私たちは人形なんかじゃない。




就業規約はちゃんとクリアーしてる。
今日の早退は予め了解を得ていた。
こちらに落ち度は何もない。




「…………ごめんなさい」




えっ!?急に素直。
すまん、じゃなくて…ごめんなさい?




「初めてなんだよ、こんな気持ちが浮き沈むのは……藤堂さんのことになると仕事すら手につかなくなるよ、ダメだ、こんなんじゃ……」




「良いんじゃないですか?」って言ったら顔を上げた。
振り回されるのは慣れっこなので。
あまり長引かせたくもないから本音でぶつかりますね?




「その方が人間らしいじゃないですか、日頃は色んな仮面被ってらっしゃいますよね?本音ぶつける相手って会社に一人は居ないとやってけないですよ、まぁ、その相手に私が選ばれた訳ですよね?ハイ、どんと来い…です」




本音と建前は持ち合わせてなければならない。
これから長く一緒にお仕事する訳ですから我儘にもお付き合いしなければ報酬貰えませんもんね。




あなたって意外と気の小さい方なので。
飾らない笑顔を向けるだけで少しは肩の力抜けるでしょ。




「俺がぶつけたら厄介なことになるぞ?」




「これ以上ですか?」って嫌味も今は言えるわよ。
素の私だもん。
秘書じゃないもん。




服装もメイクも昼間と違う。
甘い顔した私にあなたは副社長のまま。
変な立ち位置かしら?
レンカノした後って結構疲れてるのよね。
休む間もなく続けてクライアントの相手したことないし。




「じゃ、まずは俺の時も今みたいな雰囲気で居て欲しい」




「え、無理です」




「出来るならプライベートも独占したい」




「尚更無理です」










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