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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】





また完全に怒ってるよ、ヤバい。
頭を下げて、そそくさとジロウを引っ張りその場を離れた。
2人きりになって。




「ジロウ、何で出てくるの、クライアントと関わるのは私だけでしょ?」




「だって、椿さんのこと独占し過ぎです、あの人」




「ま、まぁ……今日はそんな感じね」




「僕の牽制が効いてなかったんならもう一度言うべきだと思ったんで」




静かに車を発進させハンドルを切る横顔に何も言えなくなった。
珍しくジロウが怒ってる。
あんな温厚なジロウが。
それ、期待して良いの?
どうせまた、仕事ですからって言うんでしょ。




「あ、そういやまた黒本さんとデート入った、一日独占で」




「はい、さっき見ました……大丈夫なんすか?あの副社長、またついて来るんじゃないですか」




「そうなんだよね……さすがにもうこっちのスケジュールは教えないけど」




「ハァー、僕の仕事が増えます」




「え?」




「あの人がもしまた現れたら僕が制止しますよ、クライアントのダブルブッキングなんて懲り懲りですからね」




好きでダブルブッキングさせてる訳じゃないのよ。
でもすっごい頼りにしてる。
それでこそジロウなのよね。
好き。




「ありがとね、ジロウ」




照れて何も言わない。
自宅に着いて降りようとしたら、ふいに手が頬に伸びてきて私の動きを止めてくる。




「何もされてませんよね?椿さん」




「え…?される訳ないでしょ」




「もし万が一、僕の目の届かないところで何かあったら絶対に隠さないで、僕にも会社にも報告してください」




「ん、わかった」




「告白とか、されたんでしょ」




「え?」




「椿さん、僕には嘘つくのヘタですよね」




「え、喧嘩売ってる?私、プロだよ?」




「じゃ、僕は椿さんの嘘を見抜くプロなんで」




降りようとしていた手を元に戻す。




「詳しく教えなさいよ、どの辺がヘタだって言うのよ」




「その負けん気なところ全部、いつもの椿さんじゃないから」




「え……?」




運転席から助手席の間はそんな距離もない。
ハンドルに前屈みにもたれるようにして私を見つめるの。









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