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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】





「それと神崎も徳島も佐々木もみんな既婚者だからな!」




そんな肩揺らして言わなくても。
既婚者だから何?と思うけど、この目、この顔を見れば言わんとすることが自ずとわかる。




「じゃ、独身の方いらっしゃらないんですね、私にとってはどうでもいいことですけれど」




フッと笑って出ていこうとしたらまさかの壁ドン。
「此処に居るだろ?」ってちょっと寒けが。




「あの、どこでそんなセリフ覚えたんですか?いちいち古いですし今どきドキッともしないですよ?」




「えっ!?ウソだろ」と携帯開いて頭を掻いている。
やっぱりネットか。
鵜呑みにする人初めて見たわ。
ていうか仕事の合間に何やってるんですか。
アレ?アレ?って頭抱えてる姿が可笑しくて。




「もしかして、練習してたりしたんですか?イケると思って実践したんですね」




今日はお互いジャケット着用のスーツですからドキドキさせるにはこうするしかないんじゃない?と、逆に壁ドンしてあげた。
そしたら副社長ビクッと固まっちゃうんだもん、笑い堪えるのに必死。
ネクタイ引っ張ってあげたら良い?
至近距離まで詰めたら息を呑ませる。




「とっても忙しいのでこういうことされると困ります、今後は控えて頂きたいですね、残業は基本したくないので」




「ハイ……ごめんなさい」




「わかれば良いんですよ、わかれば」




乱れたネクタイをキュッと締め直して笑顔で去っていく。
あ、ヤバ……匂い大丈夫だったかな。
ちょっと大胆だったかな。
牽制のつもりだったんだけど。
ハァー、クライアントにこんなことするの初めて。
短期間の方が何かと楽ね。
本当は企業勤めなんて私には向いてないのかも。





かと思えばキリッとした顔で仕事をこなしているし、ブレイクタイムに入ればフニャ〜と脱力している。
メリハリが大事だよね。
だから何気ない会話で覚えていた大好きなモンブラン、何とか食べて頂きたいと時間見つけて予約して買いに行ったのダメでしたか?




__今どこ?




ケーキ店に居る時に電話が掛かってきた。
会社で与えられた携帯に慌てて出る。




「えっと、今は外に……何かありましたか?」




__居ないから……どこ?










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