この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「アハハ…!すみません、笑って……」
顔が元に戻らないほどツボにハマって
「心配なんだ、傍に居ないと」と近付いてきた副社長に気付かずにまたもや抱き寄せられる。
すぐに離れた。
そう何度も引っ掛からない。
ポーカーフェイスなら瞬時になれるのよ。
仕事中だということを忘れないで。
「今度もしお昼休憩がズレるようならお知らせしますね」
秘書課には伝えていたがまさか副社長が把握してなかったとは。
いつもとあまり変わらない時間帯に休憩入ったのにな。
社内に見当たらないだけでコレか。
ちょっと異常では?
普通、ずっと一緒に仕事している相手と四六時中居たいと思うもの?
休憩くらいは離れていたいよね。
「うん、宜しく」
また微妙な空気が流れる。
仕事に無駄な感情は捨てなければ。
あからさまにシュンとされても困る。
一度許してしまったらこの人、見境つかなくなるんじゃないかって本気で思えてきた。
今一度、気を引き締めるべきね。
午後からのアポが終わった時点で休憩がてら買ってきたモンブランを紅茶と出した。
「えっ!?俺が一番好きなやつ!!」
「前に仰ってましたよね、実はランチタイムにコレを買いに行ってたんです、驚かせようと思って」
思った以上に喜んでいてホッとした。
「ちょうど甘いの欲しかったんだよ〜」と早速口にしている。
「ハイ」と一口差し出してきて。
「いえいえ、副社長の為に用意しましたのでお召し上がりください」
「サプライズだったんでしょ?それなのに電話して怒っちゃってごめんね?お詫びのしるし」
いやいや、意味わかんない。
それしたいだけでしょ。
お互い譲らない押し問答で、仕方なく私が折れた。
パクっと食べて「美味しい」と唸る。
「しかも此処の店が美味いって言ってたのも覚えてくれてたんだ?」
「………はい」
本当に美味しい、今度ジロウにも食べさせてあげよ。
「ありがとう、美味かった」って満面の笑みだけど、口元ついてますよ。
ハンカチで拭いて差し上げた、ごく自然に。
再び目が合って自分の行動に咄嗟とはいえ悔い改めた。